『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

『にっぽん地図絵本』と『せかい地図絵本』
どちらも1990年代初頭に作られ、多くの子どもたちに地図の楽しさを伝えてきました。公私教育機関からも支持され、毎年、教科用図書にも多数採択されている信頼のベストセラー作品です。

『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

まず特徴的なのが、この“わかりやすさ”。
子どもの頃の社会(地理)の時間を思い出してください。緯度や経度、面積や人口…。
たくさんの情報や記号が盛り込まれた地図。これを覚えなくてはいけないのかと思うと、ちょっぴり憂鬱な気分になったという方も多いのではないでしょうか。
実は、この2冊の地図絵本を作った絵本作家・とだこうしろうも、その一人。だから「わかりやすく、おもしろく、シンプルで、美しい」地図絵本を作ろうと取り組んだのです。

国や地域で色分けされたブロック。パッと見ただけで境界線がわかり、複雑になりがちな地図を的確にとらえることができます。
この鮮やかな配色もとても楽しい!各地の風土や文化を伝えるイラストとあいまってとても美しいデザインです。
伝える情報もグッと絞っているので、読みやすく頭に入りやすい。各国や地域の美しさや文化まで伝わる内容で、読んでいるだけで旅をしてみたくなるような気持ちにさせられます。
今でこそ、こうしたわかりやすいデザインと読みやすい情報量の地図絵本は多く見かけますが、先駆者は戸田デザイン研究室。地図絵本をきちんとデザインする、という新しいスタイルを提案しました。

そしてもうひとつ、この2冊の地図絵本には、ただ地理の情報を伝えるだけに留まらない、大きくて深い魅力があります。

『にっぽん地図絵本』の2つのページを見てください。

『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

「わたしたちが すんでいる
 このちきゅうには、
 おおよそ200の くにが
 あります。
 にっぽんは、 そのなかの
 ひとつです。」

『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

「わたしたちが すんでいる
 ちきゅうには、
 とおい むかしから いきぬいてきた
 たくさんの どうぶつや しょくぶつが
 いきています。
 にんげんも そのひとつです。」

自分の生きる国はもちろん、人間そのものの存在まで、とても大きな視点からとらえています。このまなざしは、とだこうしろうならではのもの。

『せかい地図絵本』でも、作者は語りかけます。

『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

「どうぶつに くにのさかいは
 ありません。
 くには、 にんげんが
 きめたものだからね。」

『にっぽんちず絵本』と『せかいちず絵本』

「この ちきゅうに じんるいが すんで
 50まんねん と いいます。
 きの とおくなるような
 ながい ねんげんつから みると、
 きみや ぼくの じんせいは
 ほんの いっしゅんに すぎない。
 だいじに いきよう。」

地理の知識として地図を学ぶことも、もちろん大切です。それに伴う歴史や風土を学ぶことも、子どもたちの好奇心を広げることにつながるでしょう。
しかし、地図というもののもつ可能性はそれだけではないことを、私たちの地図絵本は示しています。

知らない国の暮らしや文化、他の生きものから見た、人間の存在。
自分という存在や自分が知り得る世界から大きく抜け出て、いろいろな事柄に触れる。

それは、「何事も考え方はひとつではない」ということを知ること、そのものです。

そうした感覚は、やがて異なる国や地域、人々への理解を育み、多様な考え方を受入れる土台となる。そして子どもたちの、より豊かな将来を築いていく大切な要素になる。

私たちの地図絵本は、そんな意味を持っています。

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