『国旗のえほん』と『完全版・国旗のえほん』

世界の国々の歴史と、アイデアの結晶である国旗。
戸田デザイン研究室には、その魅力をデザインの視点から紹介する2冊の本、『国旗のえほん』と『完全版・国旗のえほん』があります。

そもそもなぜ、国旗を紹介する本を作ろうと思ったのか…。

当時、戸田デザイン研究室の事務所の周りには、たくさんの大使館がありました。
各国の大使館に、はためく国旗。街を歩くたび、その色やデザインのおもしろさに目を奪われました。
「もしかして国旗のデザインは、すごくおもしろいのではないか?」
そう思い、いろいろな国の国旗を調べてみると、実に多彩でユニークでおもしろい!その魅力を、ぜひ伝えたい!と思ったのです。
早速、いろいろな国旗の本を探しましたが、1980 年代半ば、当時出版されているものは、世界地図の周りに小さく集められているものか、すべてがコンパクトサイズにまとめられているものがあるだけ…。国旗のデザインを存分に楽しめるようなものは1 冊もありません。そこで誕生したのが『国旗のえほん』でした。
1987 年に出版され、国旗の本の元祖とも言われるロングセラー作品です。

誰もが知る大国から、ちょっと聞き慣れない小さな国まで。世界各国の国旗の中から、48 の国の旗を紹介しています。
多くの驚きの声があがったのが、このレイアウト。

『国旗のえほん』と『完全版・国旗のえほん』

1 ページに1 つずつ、とにかく大きく載せています。

世界に1つしかない模様、独特の配色。そのデザインの楽しさと美しさは圧巻です。
他にあるのは国名と首都、位置を示す世界地図だけ。究極にシンプルなレイアウトだからこそ、国旗デザインの魅力が存分に伝わってくるのです。

このデザインに焦点を絞った構成は、子どもたちの興味をかきたてるのはもちろん、大人にも斬新でおもしろい!と高い評価をいただいています。

やがて『国旗のえほん』の読者の方々から「全部の国旗が大きく載った本はないの?」という声が届くようになりました。
そうして生まれたのが、コンプリート版である『完全版・国旗のえほん』です。

当初、私たちは完全版を作ることに、そこまで積極的ではありませんでした。
「全部の国旗を紹介して、果たしておもしろいのだろうか?単調なものになってしまわないだろうか…。」そんな風に考えていたのです。
しかし、いざ着手すると、なんともおもしろい!!
特に大きな魅力を感じたのは、それぞれの国旗に込められた意味でした。

例えば「グレナダ」。国旗の左に小さく描かれているのは、ナツメグの実。この国でたくさん穫れるスパイスです。

『国旗のえほん』と『完全版・国旗のえほん』

美しい町並みで知られる「オーストリア」の国旗は、なんと、血に染まった軍服を脱いだ時にベルトの部分が白く残っていた、という恐ろしい話を基にしたデザイン!
国旗のデザインには、その国の歴史と文化、風土が詰め込まれているのです。

『国旗のえほん』と『完全版・国旗のえほん』

編集作業を進めると、それぞれの国にも興味が湧いてきます。美しい町並みや建物。おいしい食べ物。その土地に根づく素敵な歌や踊り。そして繰り返される「争い」という哀しい現実まで。心を動かされることが、たくさんありました。

だからこの完全版は、帯にも書きましたが、
  「 National flags complete edition for peace ! 」(平和のための完全版)。
【国旗のデザインの意味】【首都名】【人口】【面積】から【その国の楽しいミニ紹介】など、11 の情報を掲載。この1 冊を読めば、まるで全世界を旅する感覚を味わえるような本に仕上げました。
もちろん、主役は国旗デザインの楽しさ、美しさ。その邪魔をせず、これほどの情報を見やすく・スッキリ載せることができるのは、戸田デザイン研究室が持つデザインの力です。

「国旗を知る」ということは「世界を知る」、ということ。そしてそれは、それぞれの国の文化の違いを感じ、楽しみ、尊ぶといった感覚に近いものだと思います。
「国旗」という素晴らしいデザインが、世界への興味や理解を深める。
デザインの力を強く信じる私たちだからこそ、作ることができた作品なのです。

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