竜のはなし
作 宮沢賢治 / 画 戸田幸四郎
サイズ 31×23cm / 26ページ / 初版 1983年12月
対象年齢の目安 6歳くらいから / ISBN 978-4-924710-15-3
日本の名作を重厚な油絵で描いた、戸田幸四郎の名作絵本シリーズ。
このお話は宮沢賢治の世界を象徴する名作なのですが、『宮沢賢治全集』のなかに『手紙1』という題名で収録されているだけで、一般的には全く知られていない作品でした。それを宮沢賢治の実弟・宮沢清六さんと、ぜひ、たくさんの人に読んでいただきたい、ということで絵本化が決定。『竜のはなし』と改題して出版したのです。絵本化されているのは本作のみ、という賢治童話の中でも珍しい作品です。
人や動物から恐れられる一匹の竜。ある時「もう、悪いことをしない。」と心に誓います。許すこと、受け入れること。自分の命さえ投げ出すような、壮絶なまでの竜の優しさは、読む者に「優しさ」の意味や本質を問いかけてきます。
竜の心の内が伝わるような重厚な油絵も、絵本の世界をより深いものにしています。
仏教思想をベースにしたこのお話。「子どもは理解できるだろうか?」と思われるかも知れません。私たち戸田デザイン研究室の理念でもあるのですが、心を動かすことに、子どもも大人もありません。竜の姿を前に、子どもが釘付けになったという読者のお手紙も多くいただく本作。子どもたちの心に、深い余韻をもたらすでしょう。
- 続けて、皆さんの感想を読む
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息子には少し早いかな…と思っておりましたが、戸田幸四郎さんの絵をみて「これなら!」と思い、読み聞かせてみました。
息子は食い入るようにみていて、その反応に感激しました。言葉ではなく視覚から彼の心にダイレクトに訴えてきたようです。
以来、ことあるごとに、息子と本の内容について話しています。
(お子さんの年齢:3歳 / お母さまの声) -
短い中に伝えなくてはならない人間としての大切なものがあると思います。
いつでも読んであげられる本で、大人にも大切な一冊ではないでしょうか。
(お子さんの年齢:8歳と4歳 / お母さまの声) -
珍しく、子どもが自分で欲しいと選びました。
深みのあるお話です。絵も力強く幻想的でもあり、賢治作品にぴったり。
皮をはがれた竜が、痛々しいほどリアルに感じました。
年齢がもう少し上になって自分で読めるようになると、また感じ方が違ってくるのでしょう。
(お子さんの年齢:6歳/ お父さまの声) -
親の私もつい感情をこめて読み聞かせてしまいます。
特に細かい説明はせずに読んでいるのですが、次第に「竜は強いね。」とか「僕はおじいさんになってからじゃないと、皮はあげられないかもな…。」などと言うように。
最初は内容からして怖がるかと思いましたが、自分から読んでと持ってきます。
子どもの反応や感想で、成長を感じられる絵本ですね。
(お子さんの年齢:5歳 / お母さまの声) -
稀にしか出会えない、すばらしい絵本でした。
宮沢賢治の文は、子どもたちの心をぐいっとつかむものでした。
そして絵も文章に負けず劣らず、子どもの想像力と合体し、話の中に引き込まれていきます。良い絵本を買いました。
(お子さんの年齢:6歳と4歳 / お母さまの声) -
初めて読んで聞かせた後、7歳の息子は即座に「この話、気に入った」と言い、自分で何度も読み返していました。
明るく楽しい童話を好んで読んできたので、意外でした。
「りゅうって、ほんとうは、やさしいんだね。」
「ぼくも りゅうみたいに、皮をはがれても、肉を食べられてもいい。」とも言っています。
「やさしさ」を子どもに教えるのは難しいことですが、何かをこの本から感じとったようです。
(お子さんの年齢:7歳 / お母さまの声)
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